夏の匂い

文月も折り返しに迫ってきた。

すれ違う人たちの軽装ぶりも

見慣れてきた頃。

 

どんなに早く出勤しても

太陽の元を歩けることが嬉しい。

髪を靡かせ、少し汗を滲ませ、

僅かな木漏れ日を浴びて、

早朝の少しだけ涼しい風を感じて。

何だか生きている実感を持つ。

 

帰りが少し遅くなったとしても、

まだ完全に夜の空模様ではなく、

空の一部がネイビーとパープルと

ピンクとオレンジとが混ざった、

何ともノスタルジックな色に染まる様を

遠くからただぼんやりと眺めるのも好きだ。

 

地元に戻って

商店街を抜けた住宅街に差し掛かると、

どこかの家から夕飯の匂いがする。

家庭の温かさを感じられる匂いも好きだ。

 

そんな好きな匂いや情景を

眠気まなこで歩きつつ、

少し切ないラブソングを聞いて、

天を見上げながら歩く帰り道。

 

私だけの時間。

 

誰かにお疲れ様と言われているような、

言われていないような、

自分を少し労わるような、

そんなひとりだけの時間。

 

最近、人間とは不思議な生き物だと思う。

人間が生まれ持った環境適応能力は

凄い力なんだと思う。

無論まだまだ不慣れなことは多いが、

少しずつ仕事に慣れてきた

実感も生まれ始めている。

 

前より行き場のない気持ちを、

上手く噛んで飲めるようになった気がする。

 

ただ、慣れも慣れで怖い側面がある。

慣れてくると必ず手を抜く人がいる。

どこかで魔が差すような。

 

私もそうかもしれない。

そうはなりたくない。

 

謙虚にいこう。

 

謙虚に。